米国'n'夢子。の巻

いっけない!遅刻しちゃう☆

そんなありきたりな、しかし実際にこのように発声されているのを誰も聞いたことがない文句を言いながら、そしてこれもありきたりでありながら、実際にこのような光景を誰も見たことがないはずの、トーストを口にくわえながら通学路を走るこの少女の名は、米国'n'夢子(あめりかん・どりーむこ)という。

米国'n'夢子には足が4本ある。というと、手を前足のようにして四つん這いという姿を想起される方も、読者のおよそ半分ぐらいはいるかもしれないが、手とは別に、足が4本ある。
上半身が人間のそれで下半身は馬のそれである。
ちょうど神話のケンタウロスとそっくりな姿で、唯一違うのは、ケンタウロスの上半身は男性のように見えるが、米国'n'夢子の上半身は女性のように見えるという点のみである。

こんな姿なものだから、さぞかし気味悪がられそうなものだが、むしろ人気者であった。
下半身が馬のため足が速かったし、リレーや徒競走、騎馬戦(ひとりで戦う)など、毎年の運動会で大活躍だったから、というのもあるが、実際はその人気の根拠の大半は、その異形ゆえの妙な色気に起因しており、それは男女を問わず劣情をもよおさせた。

米国'n'夢子が人気者であったのに対し、素茶分背女子(すてぃーぶん・せがーる)はたいへん厭悪されていた。
なぜなら、素茶分背女子は頭髪が蛇のメデューサだったからである。
目が合うものを石にしてしまうという特技?技術?ーーともかくその能力によってクラスメイトに「こっち見んな!」と冷酷な言葉を浴びせられ、しかし素茶分背女子はクラスメイトを石にしたくないため、誰のことも見ないようにしていた。
皆に厭悪されても誰のことも石にしない、優しいメデューサであった。

クラスメイトであった米国'n'夢子と素茶分背女子が掃除の分担をめぐるじゃんけんで3回目のaikoになったその瞬間、そこから250億光年離れた地球という星が大爆発を起こしてなくなった。

そこにあったすべての存在は消滅した。

このように人の命というのはかくも儚いものなのだからブルース・ウィリス演じるおっさんが自らを犠牲にして亡くなったことなどとるに足らないことだよ、と、映画「アルマゲドン」をいまさら観て泣いている美人に言ったら、DVDのリモコンで酷いこと殴打され、額に裂傷を負い、鮮血が吹き出したが、そんなことはとるに足らないことだyyyyyyyyyy


藤谷☆ゆーた