マニファクチュア

パトレイバーOVA版を久しぶりに見ています。
やはり、押井作品の中でもパトレイバー周辺のもの(劇場1作目と、このOVA)が好きなようです。もちろん原作も素晴らしい。アニメから入ったわけですが、そののちに読んだ原作のほうで、ゆうきまさみの底力を深く感じた次第でした。1番最初にプロットを全て立てた上でがーっと一気に書いた感じ。隙のない完璧な作品です。未読の方は是非。
アニメのほうは、ビューティフルドリーマーのどたばた感を彷彿とさせるキャラデフォルメ甚だしい、素敵なギャグアニメ。随所に織り込まれるペダンティックな長台詞も秀逸のきわみです。絵荒れが激しいのも、いまいちテレビでは見ることの少ないオタ臭満載の(押井監督はじめ)スタッフの人々による特典(?)映像も、セル画時代のきな臭さを感じさせて思わず「うほっ」となります。
まあ、なんだかんだ言って、後藤さんとシバシゲオがかっこよすぎる。今更ですが、千葉繁最高です。
なぜか最近、ものすごく疲労していたのですが、だいぶ回復しました。アニメが心のよりどころです。
はてさて、世の中には、フランケンシュタインコンプレックスという概念があるようで、ものすごくおおざっぱに概説するならば、「人工生命体が己の姿に似てくれば似てくるほど、拒否反応を示す」とのことらしいのです。そう簡単な話ではないのですが、突き詰めれば同属嫌悪ということなのでしょうか。「似てない何かになりたい」「自分が自分としての価値を保ちたい」という話。でも、上記、パトレイバーの話を引き合いに出すまでもなく、文脈依存、パロディ、というものに、「うほっ」と思う自分がいるのもまた事実。そこらへんのバランスを保ちたいものです。
結局「本当の意味で新しいもの」なんてのはないという諦観は正しいわけですから。
まあ、私の場合はそれ以前にやるべきことは多いわけですが。
回りくどかったですが、いい曲を作り、良い演奏をしたい。それにつきます。
意識を集中してやらねば。
今は、非常に良いものを作るメンツと環境に恵まれてると思います。まあ、男塾的な話ですがね。
したっけ。また。


しょうじ


その後の追記:
いや、でも、パトレイバー始め、押井作品に通底する、「全共闘」感或いは(相反し、同時に成り立っている)「反全共闘」感というか、そういう雰囲気に引かれるところがあるのだとも思う。
警察という唾棄すべきバビロンシステムの中に、管理体制の中に反乱分子がいるのではないか、いや、いてほしい。そうでなくては少なくとも希望が持てないという、そういった期待が含まれているのではないか。
結局、真理というのは常にアンビバレントで、でもそれは「真理」といえないのだけど、だからこそ、全ての人は惑っていて(俺含め)、たやすい、わかりやすい「真理」に向ってしまうのではないのだろうか。
パトレイバーの諸作品はそういうことを如実に照射する。
どこにもわかりやすい「真理」はない。そういった「真理」は馬鹿げた笑いで笑い飛ばすべきだ。しかし、どこかにそういった、中空浮いた状態での「真理」,「本当のこと」はある。と。
前にも、藤谷が言ってたが、それは明白「人は死なないほうがいい」こと。それだけしかないと思う。もちろん、自分の意思によるものは除くけど。
理由はなくていい。理由なんてあるわけはない。
論理的には脆弱なものなんだから。
でも、この一線が守られない限り、どこにも本当のことは見出せないんだと思う。
藤谷のように、軽やかな書き方は出来ないけど。
色々な瑣末なことが走馬灯のように映し出される今日この頃だ。
だから、とっとと、人が死ぬような方向を否定する世界にならなくてはいけないんだと思う。なんら発展的な解答は見つからぬが。
パトレイバーにおける会話を他人のブログより引用して終わります。



荒川「戦争だって? そんなものとはとっくに始まってるさ。問題なのはいかにケリを付けるか、それだけだ。後藤さん、警察官として、自衛官として、俺達が守ろうとしているものってのは何なんだろうな。前の戦争から半世紀。俺もあんたも生まれてこの方、戦争なんてものは経験せずに生きてきた。平和。俺達が守るべき平和。だがこの国のこの街の平和とは一体何だ? かつての総力戦とその敗北、米軍の占領政策、ついこの間まで続いていた核抑止による冷戦とその代理戦争。そして今も世界の大半で繰り返されている内戦、民族衝突、武力紛争。そういった無数の戦争によって合成され支えられてきた、血塗れの経済的繁栄。それが俺達の平和の中身だ。戦争への恐怖に基づくなりふり構わぬ平和。正当な代価を余所の国の戦争で支払い、その事から目を逸らし続ける不正義の平和」

後藤「そんなキナ臭い平和でも、それを守るのが俺達の仕事さ。不正義の平和だろうと、正義の戦争より余程ましだ」

荒川「あんたが正義の戦争を嫌うのはよく分かるよ。かつてそれを口にした連中にろくな奴はいなかったし、その口車に乗って酷い目にあった人間のリストで歴史の図書館は一杯だからな。だがあんたは知ってる筈だ。正義の戦争と不正義の平和の差はそう明瞭なものじゃない。平和という言葉が嘘吐き達の正義になってから、俺達は俺達の平和を信じることができずにいるんだ。戦争が平和を生むように、平和もまた戦争を生む。単に戦争でないというだけの消極的で空疎な平和は、いずれ実体としての戦争によって埋め合わされる。そう思ったことはないか? その成果だけはしっかりと受け取っておきながらモニターの向こうに戦争を押し込め、ここが戦線の単なる後方に過ぎないことを忘れる。いや、忘れた振りをし続ける。そんな欺瞞を続けていれば、いずれは大きな罰が下されると」

後藤「罰? 誰が下すんだ。神様か?」

荒川「この街では誰もが神様みたいなもんさ。いながらにしてその目で見、その手で触れることのできぬあらゆる現実を知る。何一つしない神様だ。神がやらなきゃ人がやる。いずれ分かるさ。俺達が奴に追い付けなければな」


再度
東海林